異形の戦車 Object279
断言しちゃいますが、戦車に興味を持った人は誰でもそのうち「なんだか普通じゃない異形の戦車」てのに心奪われる時が来ます。 第二次大戦ドイツのマウスとか、スウェーデンのSタンク(Strv.103)とか。
その中でもぶっちぎりの禍々しさで、一目見たら忘れないインパクトを持つのが我らがソヴィエト連邦の試作戦車、 Object279(オブイェークト279、Объект 279) です。
知らない人はこれ↓を見てください。はいもう忘れない。
Object279についての解説:最後の重戦車
World of Tanks
Object279という戦車が何のために作られ、どんなものであったかを知るのに最も良い日本語資料はこれでしょう。
ゲーム World of Tanks で登場するObject279の紹介動画です。
※ただしゲーム中では「Object279 early」という少し形状が違うものが出てきます。
Object279の奇抜な円盤型の車体は、核戦争の状況化での活動、もっと言えば核爆発の爆風を避けるための形状と説明されることが多いですが、おそらく本質はそうではなく、出来るだけ装甲を厚く、寝かせ(避弾径始)、かつ重量を抑えるための形状であることが説明されています。 それにしても最大装甲圧 305mmとかエグい。
動画中にも出てきますが、この断面図の通り垂直面が一切無いすり鉢状の車体下部は、避弾径始という目的がよく分かると思います。
Wikipediaの記述
余談ですが Wikipedia日本語版のオブイェークト279 での説明は、以下のように核戦争、爆風によるものとなっていますが、
これらのうち「核戦争下での活動を考慮した重戦車」として開発されたものが、オブイェークト279である。 オブイェークト279 概要
オブイェークト279の形状はユニークである。履帯は左右2本ずつ、計4本もある。 まるで円盤のような流体曲面の車体をもち、核爆発時の爆風や衝撃波を受け流して車体が横転しないようにした設計となっている。 砲塔は普通の鋳造製だが、車体は鋳造製の本体の上に、薄手の増加装甲を被せた作りとなっている。 シャーシは縦に伸びた燃料タンクを兼ねる梁に乗せられていた。 オブイェークト279 構造
Wikipediaロシア語版のОбъект 279 ではあくまで装甲について語られています。
元の設計ソリューションでは、すべての重戦車の中で最小の装甲容積(11.47m³)を得ることができました。 その本体はキャストカーブした形状で、薄いシートの累積防止スクリーンがあり 、その輪郭を細長い楕円体に補完しています。 Объект 279 設計記述(Google翻訳による日本語訳)
全周が球状の キャスト タワーの最大厚みは傾斜角30°で305mm。 外では、タンクの船体と砲塔の側面に、取り外し可能な薄いプレートの累積スクリーンが固定されていて、細長い楕円体に輪郭を補足していました。 採用された予約方式は、すべての射程において 、122 mmの装甲貫通および90 mmの累積砲弾から、タンクの前部とその側面を確実に保護しました。 Объект 279 装甲軍団とタワー(Google翻訳による日本語訳)
最後の重戦車
もう一つ、元はロシア語のサイトのようで、Google翻訳にそのまま突っ込んだと思しきやたら読みにくいサイトですが、 「恐竜がどうやって死んだか - 最後の重戦車」 のタイトルの通り第二次大戦後の重戦車の変遷が分かります。
Object279の塗装について
クビンカ戦車博物館の迷彩塗装
さて、Object279はモスクワのクビンカ戦車博物館に保管展示されています。 みなさんご存じの世界の常識ですね。
Object279の写真をネットで漁ると、2種類の塗装があることが分かります。
1つは、グリーン、グレー、タンの3色迷彩で、もう1つはロシアングリーン(4BOとかZIS-508M )のものです。
どうやら、 2012年より前、2008年あたりから2012年のあいだのどこかで迷彩に塗装しなおされた ようです。
この[2012年10月の4Gamerの記事(https://www.4gamer.net/games/114/G011469/20121003053/) でのObject279は迷彩塗装になっており、2009年より前に作られた БРОНЕТЕХНИКА В ФОТОГРАФИЯХ(Armor in Photos) のページ ではグリーンの1色塗装であるからです。
古い写真を見るとかなり汚れていたので、お化粧直しされたんでしょうね。
年代順(っぽい)のObject279写真
ここからはプラモ作成のためにネットで画像検索したObject279の写真を、独断で年代順(っぽく)並べていきます。
1959年~1960年?
Object279 は1959年に試作車完成して各種試験が行われ、1960年には計画が中止されたとのことです。よって屋外や動態写真はそのころのものでしょう。
屋外での試験中と思しき写真です。砲身を後ろに向けたバックショットです。 この時点では砲塔にナンバーはありません。
YouTubeには動くObject279 の動画があります。これはその1場面で、とんでもないぬかるみに車体の下半分が埋まりながらもぐいぐい進んでいく姿が見られます。4本履帯による不整地走破能力がうかがえます。
1960年代?
Object279は1960年に試験が中止されたようですから、クビンカ戦車博物館に保管されたのはきっと1960年代でしょう。
保管されて割と間もない頃っぽい写真。装備品が小ぎれいで、地面のコンクリートも平らできれいです。履帯にホコリが全く積もっていません。 よく見ると 120 のナンバーが分かります。隣の車両は 121 なので、博物館に保管されてから書かれたナンバーでしょう。 ちなみにツートンカラーに見えなくもないです。どんな色?
「120」ナンバーあり
120 のナンバーがはっきり見えます。ホコリも少なく良い状態。
「120」ナンバーなし
上の写真と同じような濃い目のロシアングリーンですが、 120 が無いのが不思議です。 ワイヤーロープの輪っか部分の塗装がはげてたり地面のコンクリートが荒れてたりするので、上の写真より後の年代で、塗り直しされたものと見ます。1980~1990年代あたりでしょうか?
2000年代?
このロシア語のサイト БРОНЕТЕХНИКА В ФОТОГРАФИЯХ(Armor in Photos) は2009年で更新が止まっているようなので、サイトの更新情報もろもろによりここにある写真は2008年6月以前、たぶん2000年代後半から2008年頃のものと推測できます。
このサイト、上から下から撮った39枚もの写真がプラモ製作の参考資料として超貴重です。 しかし個人サイトのようですしいつ無くなってもおかしくない気がするので、あえてお作法を破りではありますがダウンロードした画像を貼ることにします。以下の画像はすべて БРОНЕТЕХНИКА В ФОТОГРАФИЯХ(Armor in Photos) からの引用です。
ホコリが積もりまくってとても汚いですw
120 がうっすらと判別できます。塗装が剥げまくっています。 これ、それにしてもどこから撮った?隣の戦車の上から撮ったんですかね…。
砲塔上面。
砲塔後面。明るめのロシアングリーン、錆止めの下地塗装と思われる赤茶色のほか、濃いめのグリーンが見えます。「120」ナンバーが描かれた頃は濃いグリーンだったようなので、もしかして、濃いグリーンの上から後の年代に明るいグリーンを塗装し、それをガリガリ剥がそうとしたのでしょうか…?
車体後部上面。左右のメッシュやボルト止めの部分などがよく分かります。
後方から。転輪や車体下部は塗装が剥げていないので、砲塔や車体上部の塗装をガリガリ剥がそうとした説はほぼ間違いないと思われ。
2015年以降(迷彩塗装)
説明板に赤い星の飾りがついて小ぎれいになっており、2015年から整備が始まったパトリオットパークにちなむものと思われます。
プラモの話は次回から
Object279 の説明だけで長くなってしまった…。 プラモの話は次回からとしますわ!
いやーそれにしてもますますクビンカ戦車博物館行きたくなってしまったよ。モスクワに行ける日が来ることを願う。