IBG Models 1/72 三式中戦車 チヌ
Amazonで1/72のAFVプラモをつらつらと眺めていたら、やたら評判のいい日本軍の戦車があったのでポチってみました。
IBG Models 1:72 TYPE 3 CHI-NU Japanese Medium Tank、三式中戦車 チヌ です。
お値段も1,900円でお手頃、しかもフィギュア2体付きとな。
IBGモデルズというメーカーは知らなかったのですが、ポーランドのメーカーのようですね。
ポーランドのメーカーが旧日本軍のこんなマイナーな戦車を発売し、それが日本でさくさく買えるなんていい時代になったもんです。
三式中戦車を調べる
自衛隊の戦車は好物ですが、第二次大戦までの旧日本軍の戦車はこれまであまり興味を持ってなかったので色々調べてみました。
三式中戦車 チヌ とは
旧日本軍の戦車としては珍しく75㎜砲という充分な口径の砲を装備しており、曲がりなりにもM4シャーマンと渡り合えるとして旧日本軍戦車=貧弱というイメージをくつがえす(かもしれなかった)。 しかし量産開始は終戦10か月前の1944年10月と遅かったため、166台全てが本土決戦用に温存されたためついに実戦を経験することはなかった、と。 土浦武器学校に1台が現存しているのは素晴らしい。
Type 3 Chi-Nu - World of Tanks PS4版 Wiki*
すっかりご無沙汰ですが、PS4のWorld of Tanks では日本中戦車ツリーも育ててました。 日本戦車といえば紙装甲ですがそれでもTier5のこいつは使いやすいほうで、勝率はさっき確認したら69%もありました。
ガルパンではアリクイさんチームですな。
日本の誇る三式中戦車はパンター、T-34、M4シャーマンと同等!と思う前にここも読んで、冷静になっておきましょうか。
旧日本陸軍の戦車の塗装について
この三式中戦車は、日本の戦車としてイメージする黄色の帯の入った迷彩ではなかったようです。
三式中戦車の迷彩を再現する専用色としては、GSIクレオスからラッカー系の Mr.カラー 特色セット『日本陸軍戦車後期迷彩色』 が以前から販売されていました。
なお現在は Mr.カラー AFV・戦車模型用特色 として単品販売されています。
そしてつい最近(2019年12月)、 VICカラーでも 日本陸軍戦車色 として専用色が発売されているではありませんか。 タミヤアクリル、水性ホビーカラーには専用色は出ていないので、国産の水性塗料ではVICカラーが唯一の選択肢ということになります。 …速攻でアキバヨドバシへ行ってゲットしたよね。
Mr.カラー AFV・戦車模型用特色 のページのカラーチャートより。 三式中戦車で使う後期迷彩色は、 枯草色、土地色、草色 です。
VICカラーの色見本。 Mr.カラーに該当する色は MA058枯草色、MA057赤土色、MA056草色 という名称でラインナップされているようです。
三式中戦車の迷彩パターン
Category:Type 3 Chi-Nu - Wikimedia Commons
Wikipedia Commons には終戦後に接収されたとおぼしき三式中戦車の写真がいくつもあります。 迷彩パターンはかなり大きな塗分けで、方向などに規則性はなく、境界はうねうねとした曲線のようです。
これは訓練中か何かか?日章旗を付けています。
キットを開けて作る
ここからようやく実際の製作です。 実際の製作は2021年4月24日からでした。
ランナーとマニュアル
ランナー構成はこんな感じ。 履帯と起動輪、誘導輪、転輪が一体成型されていて、しかもシャープなディテールです。 エッチングパーツも付いていてお得。 フィギュアも2体ついていてさらにお得。
組み立てマニュアルの表紙と裏表紙はカラー印刷です。
塗装指示はMR HOBBY はTC14、TC13、TC15が指定されており、これは先ほどの日本陸軍戦車後期迷彩色のことです。
タミヤはXF-13濃緑色、XF-64レッドブラウン、XF-60ダークイエローの指定となっており、タミヤの指定カラーで塗るとほぼドイツ3色迷彩ですね。
タミヤの指定色で塗ると箱絵や塗装見本みたいになりそうですが、Mr.カラーやVICカラーの専用色とはかなりイメージが異なりますねえ。
作っていく!
砲塔を組んだり転輪を貼ったりして組み立てていきます。 パーツの合いはかなり良好です。 ただし、車体の前端でスキマが出来たので、パテ埋めして成型しました。
こんなふうにスキマがあったので(テカってるのは当初は瞬間接着剤で埋めようとしたため)
パテを盛って面を整えました。 ちなみにゴマ粒みたいなエッチングパーツでハッチの取っ手が再現されてます。
後ろ側のエッチングパーツです。 マフラーカバーだけは塗装のために接着は後回しにします。
塗る
VICカラー 草色、赤土色、枯草色
左からVICカラー日本陸軍戦車色の 草色、赤土色、枯草色です。
マニュアルの塗装見本よりかなり落ち着いた渋い色合いで、ドイツ戦車の3色迷彩とは趣が異なり、これはいいですねえ。 日本戦車が個性的に見えそうです。 枯草色はいわゆるダークイエローより暗めで青みがかっており、赤土色もかなり黒っぽく、日本の田畑のような「こげ茶」です。
塗っていく!
オキサイドレッドのサーフェサーの上から筆塗り、これで2度塗りくらいです。 迷彩パターンは筆で直接塗分けてます。
迷彩パターンは、意識してぐねぐねと複雑にしてみました。
緩い曲線でシンプルで大柄なパターンとしている作例も多く、実車写真でもそういうのが多いのですが、時々ぐねぐねの塗り分けされているケースもあるので、今回はそのようにしています。
3度塗りくらいで発色してきましたが、 全体的に色がくっきりしすぎている と感じます。 特に赤土色は色が濃すぎるというか、明度が低すぎ、彩度が高すぎるように感じました。
実車の写真ではモノクロなので実際の色は分からないものの、迷彩の3色の明度差はそれほどないようです。 さらにスケールエフェクトを考えると、10%~20%程度は明るくしたほうが良いと思われます。
各色に白を混ぜて明度を上げて(彩度は下がる)塗り重ねたものです。 上の写真と比べて赤土色が明るくなったのが分かるでしょうか。 赤土色4滴に対して白を1滴、つまり20%で混色しています。
履帯や小物を塗り分けて塗装は完成です。 ちなみに車長ハッチの裏側と機銃架はカーキグレーにしてみました。 マフラーはウェザリングカラーのステインブラウンを濃い目で塗っています。
戦車本体の塗装は大体これで完了です。 次回、ウェザリングと日本兵のフィギュアを塗装して完成です。
スケールエフェクトについて
スケールモデル界隈におけるスケールエフェクトとは、 「小さな模型は実物を遠くに見ているのと同じであるため、空気遠近法により実物より明るめ&彩度低めに塗装すべき(実物通りの色を塗ると暗くなりすぎる)」 というものでです。
今回、調べたものをメモっておきます。 結論として、一番濃い赤土色については白を20%としました。
模型の塗装における空気遠近法について、法則化できないか考える – 燕雀洞
・色相: この程度の縮尺では、色相の変化はほとんど無い。
・明度: 変化が顕著なのは明度3.5以下の低明度域の色で、全体にやや明るくなる。
また、明度8以上の高明度域では、僅かに暗くなる。
・彩度: 彩度が上がるにつれ、彩度が顕著に下がる。
また、大気による散乱によって青みを帯びる影響からか、特に黄色系の彩度が下がりやすい。
こちらのサイトではいろいろな色がスケールごと(1/72とか1/700とか)にどのくらい色が変化して見えるかがマンセル値で検討されています。
模型の縮尺と色のスケール・エフェクトについて、英国の航空史研究家でモデラーでもあるイアン・ハントレー氏が雑誌スケールエアクラフトモデリング誌(1990年11月号)に大変興味深いデータを発表しているのでご紹介します。 大体1/24スケールで5%、1/32スケールで10%、1/48スケールで15%、 1/72スケールで20% 、1/144スケールで30% 程度明度が上がるという結果が出ていますので、色を混ぜる時にこれを覚えておくだけでも充分でしょう。
国際的な模型協会であるIPMS(International Plastic Modelers Society )の、 ストックホルム支部のHPに、まさしくスケールエフェクトの記事があり、 塗りたい色に対してどの程度白(または明灰色)を足すべきか書かれている。
リンク先のUrban's Colour Reference Chartsによると、1/32で7%、1/48で10%、 1/72で15% 、1/144で23%明るくすべき、とあります。