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自衛隊戦車色を比較してみる(VICカラー、タミヤ、Mr.カラー)

自衛隊の二色迷彩

10式戦車など、陸上自衛隊の戦闘車両は濃緑色と茶色の二色迷彩で塗られています。 プラモ的には、第二次大戦のドイツ戦車みたいな三色迷彩に比べると「映え」の点ではなんとなく地味ですが、色数も少なくパターンも細かくないので、迷彩塗装としてはかなりとっつきやすいと思います。

で、この自衛隊の二色迷彩塗料について、 プラモ塗料メーカー各社から出ている専用色を塗ってみて色味を比べるという、自己満足かつニッチなコンテンツです。

どれを買えばよいか迷っている人には役に立つ…のか?

VICホビーカラー、タミヤアクリル、Mr.カラー

自衛隊戦闘車両の迷彩色は長らくGSIクレオスのMr.カラー 特色セット「自衛隊戦車色」だけという状態続いていましたが、2008年頃にタミヤ アクリル で「茶色、濃緑色(陸上自衛隊)」が発売され、私も愛用してました。 そして2019年、新興メーカーVICホビーが「陸上自衛隊戦車色」を発売し、さらに充実しました。

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左から、

メーカー 色名 型番 種類 ツヤ
VICホビーカラ 陸上自衛隊 戦車色 茶色 MA106 水性 半つや
VICホビーカラ 陸上自衛隊 戦車色 濃緑色 MA105 水性 半つや
タミヤ アクリル 茶色(陸上自衛隊 XF-72 水性アクリル つや消し
タミヤ アクリル 濃緑色(陸上自衛隊 XF-73 水性アクリル つや消し
Mr.カラー 陸上自衛隊戦車色 茶色3606 TC08(現C517) ラッカー 3/4つや消し
Mr.カラー 陸上自衛隊戦車色 濃緑色3414 TC07 (現C516) ラッカー 3/4つや消し

今回、これらが我が家のラインナップに揃ったので、実際に塗り比べてみます。 なお、他にもMr.カラーの新しい型番(C516,C517)、タミヤラッカーのLP-25,LP-26なんかもありますが、それらは持ってないのでスルーです。

本当は、リニューアルしたGSIクレオス 水性ホビーカラー(AQUEOUS)で自衛隊戦車色が出てくれれば私としては本命なのですが。

まずは結論

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先に結論を書いておきます。 あくまで私の主観ですが、

  • 塗ったそのままでの色の再現性はタミヤアクリル。色味とツヤ消しの感じが実物の印象に一番近い。緑はもう少し暗めでもいいかも。
  • 筆塗りのしやすさもタミヤアクリル。ただしデカール貼りやスミ入れ・ウォッシングなどのウェザリングのためには結局クリアコートが必要。
  • VICカラーはしっかり塗り重ねて発色させればタミヤと遜色なし。半ツヤなのでタミヤより扱いやすいかも。
  • Mr.カラーは発売が古いせいか色が暗く、再現性が低い気がする。スケールエフェクトも考慮すると、かなり白を混ぜるなどして明度を上げて使う必要あり。

各カラーを比較してみる

各カラーの比較:塗ったそのまま

プラスプーンに筆塗りで塗って比較しました。 それぞれ4~5回の重ね塗りをしています。

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塗ったそのままの塗装です。 左からVICカラー、タミヤアクリル、Mr.カラー。

VICカラーとタミヤアクリルの色味がかなり近いです。 実物の色合いと似ている印象ですが、もう少し緑は暗めでもいいかもしれません。。 Mr.カラーは他の2社と明らかに色合いが異なり、暗さ(明度の低さ)がはっきり分かります。 そのほか、タミヤアクリルはツヤ消しっぷりが際立ち、そのせいでやや明るく(白っぽく)見えます。

各カラーの比較:トップコートでツヤを揃える

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ツヤを揃えるために、半光沢のトップコートGSIクレオスの水性半光沢缶スプレー)を吹いてみたのがこちらです。

左のVICカラーと中央のタミヤアクリルはほぼ同じ印象になりました。 若干、VICカラーは緑が明るめで、タミヤアクリルの方が彩度が高いでしょうか。 塗ったそのままではタミヤアクリルのほうが白っぽく見えたのですが、これはツヤ消しによる効果ですね。 タミヤアクリルはツヤ消しであることを計算してこの彩度なのかもしれません。

実物写真との比較

2018年の富士総合火力演習での実際の車両の写真です。 天候やホワイトバランスによって色味はバラバラなので、参考程度で比較してみてください。

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10式戦車の群れ。後ろには87式偵察警戒車。 曇りのせいか、わりと青みがかった写真になってます。

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草むらにひそむ99式自走155ミリ榴弾砲。 これもやや青みがかった写りです、

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16式機動戦闘車の群れ。 泥汚れで色が分かりづらいですが、日が照っている時間だったので、割と暖色系な色合い。 結果的にVICカラーやタミヤアクリルの色合いにかなり似ています。

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90式戦車。 これも太陽に照らされて黄色みがかった色あいに写っています。 緑色が茶色に比べて濃いめ(暗め)に見えます。

白黒にして比較

モノクロにしてみました。

モノクロにすると分かるのですが、実車写真では、明らかに緑色のほうが茶色より暗く写っています。

対して各カラーの写真では、タミヤカラーとMr.カラーでは緑色と茶色の境界線が分かりますが、VICカラーは2色の違いが分かりづらいです。 つまり緑色と茶色がほとんど同じ明度であるようです。 緑色はもう少し暗くてもいいのかもしれません。 Mr.カラーの濃さ(暗さ)は一目瞭然ですが、まあよし。

塗りの過程

塗り重ねの過程です。 各カラーごとの塗料の伸びや隠ぺい力の参考になるかと思います。 サーフェサーの下塗りはなし。 VICカラーとタミヤアクリルはほぼそのままの濃度、Mr.カラーはだいぶ粘度が高くなっていたので(買ってから4~5年たってるはず)うすめ液で希釈してます。

一度塗り

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まずは一度塗りしました。 左からVICカラー、真ん中タミヤアクリル、右はMr.カラーです。

VICカラーの色乗りの悪さははまあいつもの通り、筆ムラも毎回こんなもんです。 タミヤアクリルは伸びが良いので筆のストロークも少なく済むので、楽です。 Mr.カラーはふつう。乾くのが早い印象。

二度塗り

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二度塗りです。
真ん中のタミヤアクリルは筆ムラもなく、もうほとんど塗り完了です。すげえ。 左のVICカラーはまだまだ色が乗ってません。 右のMr.カラーもまだ塗り重ねが必要です。 それでも、Mr.カラーは暗めで明度が低いことが見えてきました。

三度塗り

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三度塗りしました。
真ん中のタミヤアクリルはこれでOKとします。 ムラをなくすことを目的に、少し水で薄めて塗りました。 右のMr.カラーもこれで完了。 2回目よりも薄めて、下の塗膜を壊さないようにフェザータッチで塗っています。 左のVICカラーはもう1,2回重ね塗りが必要ですね。

四度塗り(完成)

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四度塗りでVICカラーもOKとしました。 (でもこのあとなんやかやとトップコートを吹いたり、さらに重ね塗りしたりしましたが)

まとめ

VICカラーの「自衛隊戦車色」総評

新興メーカーのVICホビーカラーですが、積極的にマニアックなカラーを出してくれているところです。 自衛隊戦車色も、色味の再現性はばっちりです。 半ツヤであることから、その後のスミ入れやウォッシングもやりやすいです。

ただ、最初のうちはどうにも色乗りが良いとは言えず、少なくとも3回、結局5回くらい塗り重ねる必要があります。 それでも不思議と塗膜が厚ぼったくなったり凸凹したりしません。 なので、塗装が終わってみると上質で均一な塗装面になっており、うれしくなります。

個人的に今一番肩入れしています。

タミヤアクリルの「茶色・濃緑色(陸上自衛隊)」総評

さすがAFVのタミヤ、貫禄です。 調色せずにそのまま塗ってもほぼ実車のイメージ通りになります。 陸上自衛隊のプラモなら、とりあえずこれ買っておけばOKです。

ただしタミヤアクリルはAFV用カラーは完全ツヤ消しなので、結局クリアコートをすることになるのが惜しいです。 スミ入れやウオッシングなどのウェザリングを行う前提だと、ツヤ消しだとうまく伸びなかったりするので使いづらいことがあるんですよね。

ちなみに今回、改めて感じたのは筆塗りのしやすさです。 塗料の伸び、一発でほぼ決まる隠ぺい力、塗ってて気持ちいいです。 シタデルとかファレホとかのお高い塗料は、これよりもきっと気持ちいいんでしょうけど、タミヤアクリルは1本150円足らずかつどこでも買えるという点でも本当に優秀。 あとはもっといろんな色を出してもらえれば!

Mr.カラー「陸上自衛隊戦車色」総評

明度が低いので、白などで明度を上げて塗らないと暗く沈んでしまいます。 20%か30%、あるいはスケールエフェクトを考慮するともっと明るくしてもいいかもしれません。

タミヤアクリルの自衛隊色が出る2000年代前半までは、Mr.カラーの特色セットが唯一の選択肢だったと思いますが、今となっては調色必須なのでこれを使う積極的な理由は無いと思います。 現在のラインナップでは陸上自衛隊戦車色の特色セットではなく、後継色のC516、C517で単品で買えるようになっていますがこれって同じ色なんですよね?未確認。

それよりも、水性ホビーカラー(AQUEOUS)で新世代の自衛隊戦車色を発売してほしいです!

ところで、久々にラッカー系のMr.カラーを塗ったのですが、やっぱり私にはラッカー系は筆塗りが難しいです。 溶剤が強力なので、重ね塗りすると容易に下の塗膜を剥がしてしまうんですよね。 もちろん濡れているところを筆で触らないのは基本ですが、それでも少し筆のタッチを重ねてしまうとすぐに下の塗膜を持っていってしまうので、すごく神経を使います。

水性のカラーは乾けば下の塗膜はほとんど冒さないので、気楽に重ね塗りできます。 臭いもきついし、ラッカー系は今後は使うことはないでしょうなあ。

写真撮影のホワイトバランス、露出、カラーモードについて

今回は色の比較ということで、簡易的ですが出来るだけホワイトバランスと露出を合わせています。
具体的には、ホワイトバランスは 銀一シルクグレーカード (の裏面のホワイト)を使ってカスタム設定し、露出は背景のグレーカードに向かってスポット測光しています。

カメラはパナソニックLUMIX G8で、RAW現像しているわけではなくjpeg撮って出しです。 フォトスタイルという色再現モードが選べるのですが、塗装完了後の比較写真は自然な色を出すために「ナチュラル」としました。 ちなみに、1回塗りから4回塗りの途中経過の写真はこれを「ビビッド」で撮ってしまったため彩度濃いめ、コントラスト強めになっていたので、少し修正を加えています。