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マツダ/ユーノスロードスターのプロトタイプその2【エクステリア】

前回 からずいぶん間が空いてしまいました。 あらためて初代ロードスターのプロトタイプを写真で紹介します。

プロトタイプと初代NA

まずプロトタイプと初代NAを並べてみます。

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すでにかなり雰囲気は似ており、プロトタイプの時点でNAのイメージが出来ていたことが分かります。

しかし明確に、どこか違う印象を受けると思います。以下それを追っていこうと思います。

エクステリア

フロント、サイド、リアビュー

まずは3面図です。

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フロント

NAとの違いで一番目に付くところは黒の水平のキャラクターラインとオレンジのウインカーだと思いますが、NAで「目」をイメージしたクリアのウインカーランプはまだこの時点では着想されていなかったようです。ロードスターでは実際に「顔」というものをすごく意識して開発されたようです。ちなみに「口」の形はNAとほぼ同じです。

ヘッドランプへのこだわり

3台目はヘッドランプを付ける事にこだわっていた。顔を、それもハッピースマイルフェイスのキャラクターを持たせるのが狙いだった。 そのためには目が欲しい。 1、2台目のヘッドランプはリトラクタブル方式を使っていた。

マツダ/ユーノスロードスター 日本製ライトウェイトスポーツカーの開発物語」p.75

また、プロトタイプはボンネットが切られておらずヘッドライトのポップアップ部分が角丸四角なのですが、FD型RX-7みたいな雰囲気です。FDの方が後からデザインされたと思いますが。

前回福田さんから伺った 2つ並んだバルジは、NAでは中央に1つとなっています。

サイド

サイドでも黒のキャラクターラインがまず目立ちますが、想像するにNAの完成度の高いデザインにはさらなる「キャラクター」は不要ということになったのでしょうか。

そのほかNAと比べて特徴的なのはこのあたりです。

  • フロントノーズがNAのほうがより丸みがあり、下方に向かって丸まっている。
  • リアエンドが直線的に断ち切られており、ダックテールが少し強調されている。
  • ベルトラインが高い。腰高。
  • ドアハンドルが隠されている。

フロント、リアエンドについては要はNAより直線的ということだと思います。これは私が思うに プロトタイプと完成形であるNAの違いの核心部分 ですので、後述します。

もう一つの核心は、写真からは分かりづらいですがベルトラインの高さです。『日本製ライトウェイトスポーツカーの開発物語』によるとこのプロトタイプはベルトラインが高く、以降の開発にあたってはベルトラインを下げることが最重要事項だったそうです。そう言われてみると腰高感があります。以下は同書籍からの引用です。

2台目のデザインにあたっては1台目のデザインコンセプトをそのまま継続した。しかし、1台目はFRファミリアがベースであったために 全体的に車高が高く、今ひとつLWSとしてのイメージを出し切っていない部分もあった。 特にベルトラインが高く、FRのLWSとは思えない佇まいをしていた。

まず私が手をつけたのがベルトラインの高さであった。以前パイプタバコを愛用していた私は、写真で見た“LWSに乗って路上でマッチを擦りパイプを吸うドライバーの仕草”が頭から離れなかった。

「福田元デザイン本部長からクレイモデルを前にドアカット、ベルトラインの低さを強調するよう指示が飛ぶ」

こうして制作された2台目のモデルは、出来るだけベルトラインを低く抑えることにより、“エキサイティングでコンパクト、低く、走り出しそうな感じ”という要件はほぼ満足したが

マツダ/ユーノスロードスター 日本製ライトウェイトスポーツカーの開発物語」p.67-69

ドアハンドルについては内部に黒いレバーがあり、それを上下に動かすことでドアが開けられるようです。

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リア

これは一目瞭然、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に永久収蔵されたことで有名なテールランプがまだデザインされていません。また、NAではテールランプの高さにあるナンバープレートがバンパーにあります。

また、プロトタイプはNAに比べリアエンドの丸みが少なく、ダックテールがちょっぴり高いです。

テールランプ

テールランプは奥行き感がなく平面的、直線的ですがシンプルで悪くなく、NAのテールランプが素晴らしすぎますが、なかなか良いデザインだと思います。

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ダックテール

また、リアエンド部分、NAとのダックテールの雰囲気の違いはこちらの写真をどうぞ。

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フロントウインドウ

オープンカーの命、屋根のないフロントウインドウです。

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実は今回一番不思議だったのがこのフロントウインドウで、どこから調達したものなんだろう?という点です。 上の写真で奥の方に見えていますが、形状が量産モデルであるNAのものに非常によく似ているのです。しかしプロトタイプが作られた時点でNAの部品が存在するはずもなく、なにかの車種からの流用かと思いますが、一番ありそうなSA22CRX-7ともAピラーの滑らかさなんかがイメージが異なっているんですよねえ…。

あと細かいですが、ワイパーがNAに比べるとボンネットの下に引っ込んでいます。 NAではワイパー全体がボンネットの上に出ています。推測ですが、これも車高を下げるためにボンネットの高さを抑えた結果なのかもしれません。

核心:プロトタイプとNAの「丸み」

さて、サイドビューのところでも触れた 核心部分 についてです。 端的に言えばプロトタイプより完成形のNAではより「丸み」があります。

これは単なる丸みではなく、以下のように明確な意図があり、また実はロードスター以降、「ユーノス」の頃から2010年代「魂動」に至るまでのマツダのデザインに通底するものだということが分かります。

2台目の外観デザインではダイレクト感覚を強く訴える上でコンパクト感、低さを特に強調したのは良かったが、心に引っかかっていたのは表現できなかった”存在感”、”RX-7の下に位置付けるマツダスポーツカーのイメージ”、”マツダデザインの方向性を示すべく新しいアイデンティティに繋がるようなデザインテーマの提案”等であった。

線的な要素で車を感じるのではない。今までとは明らかに違う何かがそこにはあった。

「光と影」だった……。これまでの造形はスケッチを描き、そのイメージを元に感覚的に立体を想像し図面化する。

線は均一的な曲線であれば、あるいはうねっていなければ良し、面はへこみが無ければ良い、まだ2次元的な造形域を出ていなかった。

建物や自然と車の距離が遠いアメリカでは周りの景色がボディに写りこみ、これによって表情も変化していく。冷たい鉄板が光と影、リフレクションを融合させることで自然と同化する。まさにボディに”人間味”、”暖かさ”が吹き込まれたと思った。

マツダ/ユーノスロードスター 日本製ライトウェイトスポーツカーの開発物語」p.70-73

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冒頭のプロトタイプとNAの写真、 特にフロントフェンダーの膨らみあたり、違いが見えてきませんかね…。

長くなったのでインテリアは次回に。途中までは書いていますが次は早くUPしたいですね…。